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コラム: アスペルガー症候群(昭和大学附属烏山病院 院長 加藤 進昌氏)

こちらの内容は、昭和大学附属烏山病院 院長 加藤 進昌氏のコラムになります。

https://www.fukushihoken.metro

.tokyo.lg.jp/smph/shougai/

shougai_shisaku/hattatsushougai.html

宜しければご参照ください。

アスペルガー症候群の名前はすっかり有名になりました。私の発達障害外来では、大部分の方が「アスペルガーでは?」と、その診断名を求めてきます。多くの一般書では「歴史上のアスペルガーの人たち」といったアスペ天才論が幅を利かせています。そういう意味では、たいていの精神疾患が声を潜めて語られるのとは対照的です。こういった論調の多くは十分な根拠に基づいていませんし、無視してもいいのですが、そういう誤解を生む背景がないわけではありません。私たちの専門外来受診者の統計では、アスペルガー症候群と診断した人たちの言語性知能は平均110と高い結果でした。また、彼らの家系には高知能者(有名大学卒や研究者など)が多く、おそらく平均年収も高いと思います。これは、たとえば統合失調症などの家族背景とは様相が違うのではないかという印象を持っています。自閉症が関心を惹く理由の一つは、彼らの子供時代は容貌がノーブルで、しかし社会性が乏しいというミスマッチがあるからと私は思っていますが、それに通ずるものがあります。

アスペルガー症候群という名称は、イギリスの自閉症研究者であるローナ・ウイングの命名によります(1981)。ウイーン大学の小児科教授に戦後就いたハンス・アスペルガーが1944年に記載した4人の「天才肌」の子供たちから始まっています。レオ・カナーによる早期幼児自閉症の発表(1943)が世界中で注目されたのに比べ、その世界での認知には長い時間がかかりました。戦争中のドイツ語文献であったことに加え、カナー型に比べて奇異さが目立たない軽症例と見られたため
のように思えます。しかし、その再発見は成人例が多いことの見直しにつながり、今日では注目度において完全に逆転しています。それには上記のような「カッコよ
さ」があずかっていますが、機能的脳画像の進歩によって高機能者の研究が進んだことも大きいと思います。その流れが高じて自閉症との境目がはっきりしなくなり、今では自閉スペクトラム症(ASD)と一つの連続体の中に納まり、DSM-5では名称も消えてしまいました。妙な付加価値がついたこともあるので、頭を冷やすにはよかったかもしれません。

私は成人例を多く診てきて、古典的自閉症よりもアスペルガー症候群の方がむしろ均一性が高いような印象をもつようになりました。彼らの家系は集積性が高く、「変わり者の男性」が複数いることは珍しくありません。それは病気自体の遺伝性が高いという意味ではありません。アスペルガーが最初に喝破したように、一種の気質が、特に男性に受け継がれていくのです。自閉症は知的に低い例も多く、その精神内界は謎です。わからないまま「理解の難しい知的障害」が「特定不能」として混じりやすいことも研究には足かせです。

社会性という人間性の根源を探る最適なターゲットは、実はアスペルガー症候群なのではないでしょうか。

以上

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