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介護士34歳男性が「孤独」から逃れられないワケ 校庭で暴れて転校、ユーチューバーを脅迫

自閉症スペクトラム障害のケンゴさんは、孤独な人生を歩んできた

自閉症スペクトラム障害のケンゴさんは、孤独な人生を歩んできた(編集部撮影)  

今回紹介するのは「現在は一般雇用でなんとか働いているが、今以上の収入アップのめどはなく、結婚できるかなど将来の不安がつねにつきまとっている」と編集部にメールをくれた、34歳の男性だ。

大人の発達障害――。私が取材で出会った発達障害を抱える人のうち、ほとんどは「そう診断されてホッとした」と言う。それまでの生きづらさが、自分の努力や甘えのせいではなく、障害のせいだったとわかり、安心できた、納得できた、と語るのだ。

一方、都内の高齢者向け介護施設で働くケンゴさん(34歳、仮名)は逆である。30歳を過ぎたころ、「親にうるさく言われて」病院に行ったところ、自閉症スペクトラム障害(ASD)と告げられた。このときのことを「余計に落ち込んでしまいました」と振り返る。

なんでも障害のせいにしてしまう

「わかったところで、経済的なメリットがあるわけではありませんでしたから。就労支援の相談員からは『障害者雇用枠に移っても、月収は17万円くらい。(一般枠の)今より確実に下がる』と説明されました。それでも、障害者手帳を取れば、(家賃の安い)都営住宅に入れるかなと思ったんですが、交通の便などの条件が合う、単身者向け物件の抽選倍率は100倍を超えていて、とても無理だなと。そもそも、医師からは『発達障害だけでは、手帳は出せない』とも言われましたし……」

正確には、障害者手帳を発行するのは地方自治体だし、中には、発達障害という診断のみで手帳を取得している人もいる。ただ、その基準はあいまいで、うつなどの二次障害があったほうが、申請が通りやすい傾向はある。

「それだけじゃありません」。ケンゴさんが続ける。

「仕事でも、対人関係でも、うまくいかないことがあると、なんでも障害のせいにしてしまうようになり、頑張ろうという気になれなくなりました。(診断される)前のほうが、まだポジティブだったと思います」

自分から話しかけることが苦手で、子どものころからいじめを受けた。教師や親から「覇気がない」「感情がない」と言われる一方で、小学校時代には、ストレスから校内でホースの水をまき散らすなどして暴れた末、転校を余儀なくされたこともあったという。

学校の成績はトップクラスで、高校は地元の進学校に進むものの、オンラインゲームにはまるようになって成績が下がり、なんとか入った大学も中退。その後は転落の一途だった。

業を煮やした親から、なぜか「寺に入って、自分を見つめなおしてこい」と言われ、地方にある寺の住職の下に預けられた。ただ、預け先がよくなかったのか、ほどなくして「ヤクザのパシリをさせられるようになりました」。そこで、暴力を受け、逃亡。ネットカフェで寝泊まりする中、たまたま目に着いたユーチューバーに対して殺害予告などを送り付けたところ、逮捕され、実刑判決を受けた。

衝撃的な過去から現在までのいきさつを語ってくれたケンゴさん(編集部撮影)

進学の際に借りた奨学金の返済を肩代わりしていた親からは「こんなにしてあげているのに、どこまで落ちていくんだ」と責められ、身元引き受けを拒まれた。そして、再び“ネットカフェ難民”に。ネットで貧困者支援などを行うNPO法人を探し、彼らの支援の下、生活保護を利用しながら、介護施設で働き始めたのだという。

生活保護の利用は4年ほどでやめ、社会福祉士の資格も取ったが、生活は安定しなかった。介護労働は心身ともにハードなわりに、労働条件は悪い。ケンゴさんの場合、人間関係がうまくいかないこともあり、「よりよい待遇の職場を探して」転職を重ねるわけだが、はた目には「仕事を転々としている」と映るのだろう。親から「発達障害かもしれないから、病院に行くように」と言われたのもこの頃だという。

友達さえいたら、もっとうまくいった

取材中、ケンゴさんは「友達がほしい」と何度も繰り返した。

ケンゴさんによると、子どものころ友達と呼べる人が1人でもいれば、気持ちが落ち着き、勉強にも集中できたという。せっかく入った進学校で成績が下がったのは、友達がいなかったから。正確には、1人いたが、その彼は別の高校に籍を置く不登校の生徒で、親から「そんな子と付き合うな」と言われた。ようやくできた友達を奪われ、逃げ込んだ先がオンラインゲーム。「ゲームに没頭することで、寂しさを埋め合わせていました」。

大人になってからは、会員制交流サイト「ミクシィ」を通し、何人もの女性に会った。しかし、いずれも友人関係にさえなれずじまい。「僕が受け身で黙ったままだから、(相手も)面白くなさそうでした」。あまりに大勢の相手にメッセージを送ったところ、スパム扱いされ、最後はアカウントが凍結されてしまったという。

SNSで知り合った人たちが集まるオフ会にも参加しているが、どうにも会話の輪に入っていくことができない。「(オフ会に)遅刻してきた人が、その理由を面白おかしく話しながら、場を和ませているのを見ると、うらやましい。それに比べて僕は冗談のひとつも言えないんです」。落ち込むたび、のめりこむのは、オンラインゲーム――。

周囲から「感情がない」と言われたというとおり、ケンゴさんの表情は一見乏しい。そして、至極まじめな口ぶりで、私に対し「記事を書くとき、話は誇張するんですか? 貧困の記事だから、給料とか、実際より低く書いたりされるんですか?」などと聞いてくる。

話を捏造するのかと言っているのも同然で、普通に考えれば失礼な話ではある。私は発達障害にみられがちなコミュニケーション上の問題だと受け止めているが、ケンゴさんの対人関係がうまくいかないのは、こうした直接的な物言いも一因なのかもしれない。

一方で、物静かなケンゴさんが、小学校で暴れたことや、ユーチューバーを脅迫したという話は意外だった。殺害予告はもちろん許されることではないのだが、視点を変えてみると、ケンゴさんが“キレた”背景にもまた理不尽ないじめや暴力があった。それは、ストレスに対する正常な反応であり、ケンゴさんにも柔らかな感情があることの証だろう。

「人の感情の深い部分が理解できない。でも、怒りの感情は人並みにあるみたいです」。ケンゴさんはそう言って冷静に自分を分析する。しかし、スパム扱いされるまで、ひたすらメッセージを送り続けたというケンゴさんの姿を想像するにつけ、私は、彼の“孤独”への恐怖を思わずにはいられない。

介護職の待遇の悪さ

ケンゴさんの経験から、伝えなくてはならないことが、もうひとつある。それは、介護労働の劣悪さだろう。本連載では、発達障害を抱えた人と出会うことも多いが、同じくらい介護職場で働いている人に出会うことも多い。介護の仕事をしているから貧困なのか、貧困に陥る人は介護の仕事に就くしかなくなるのか――。いずれにしてもゆがみきった構図である。

ケンゴさんは、これまでグループホームやデイサービス、有料老人ホームなどさまざまな介護職場を渡り歩いた。最初に働いたグループホームは全国に100カ所以上の施設を展開する大手事業所だったが、正社員なのに社会保険はなし。夜勤は1人体制の24時間勤務。月収は約16万円で、時給換算すると、最低賃金をはるかに下回る水準だったという。

ほかの施設も、夜勤は1人体制のことが多く、その間、ナースコール対応やおむつ交換に追われ、一睡もできないことはざら。正社員として採用されたのに、一方的に「非正規雇用に切り替えたい」と言われたこともある。

現在の勤務先は、毎月の手取りこそ20万円を超えているが、月8回もの夜勤をこなさなくてはならない。採用時、3カ月後に月給制にすると言われたのに、勤続3年の今も日給制のまま。おかげで今夏のボーナスは、ほかの職員の半分の5万円ほどだという。

「介護職場なら、面接さえ受ければ、どこでも働けるという人もいますが、僕の場合、100カ所以上面接を受けても、採用されるのは3、4カ所くらい」とケンゴさんは言う。

なんとか採用されても、デイサービスのような利用者や家族とのコミュニケーションが求められる通所施設では、上司からの評価は低く、待遇を切り下げられてしまうこともある。結局、働き続けられるのは、利用者全員が認知症の生活保護利用者で、本人とも、家族とも話す必要のないような入居施設。ただ、そうした職場では、職員の待遇もまた最低レベルどころか、法令違反の働かされ方が横行している。

「僕の周りで、介護の仕事を好きでやっている人はいません。ほかに行き場のない人たちです。自分もこの仕事に向いているとは思えない」

基本的に理知的で、温厚なケンゴさんは、介護の仕事にやりがいを感じているわけではないが、極端に手を抜くこともない。ただ、同僚の中には、おむつ交換をさぼったり、「うんこ、食うんじゃねえ!」「早くしろ!」といった暴言を吐く人もいるという。

最近は、介護職場の待遇も改善されたとの声も聞くが、はたして本当にそうか。ただ二極化が進んでいるだけなのだとしたら、何の問題解決にもなっていない。

繰り返される「さみしい」

ケンゴさんは現在の暮らしを「悪くもないけど、よくもない」という。

仕事はあるが、いつ失業するかわからない。そうなったら、再び生活保護を利用するしかないので、住宅扶助内に収まる家賃5万円のアパートから引っ越すこともできない。アパートの台所は自炊できるだけの広さがなく、弁当を買うしかないのだが、コンビニ弁当は高いので、近所のスーパーで値引きされた弁当を買う。職場に行けば、同僚はいるが、友達はいない。そろそろ結婚相手を探さなければと思うが、あてはない。要は、先が見えない、というのだ。

そして、こう言ってため息をつく。「独りはさみしい」。


以上ですが、如何でしたでしょうか?
私はこの記事を読んで2つ思ったことがあります。
1つ目は、介護の職場というのは社会の底辺にある仕事というイメージや現実があるようです。私も以前短期間ですが、障害者施設のアルバイトをしたのですが、その面接の際になんで君みたいな人がこの仕事に応募しようと思ったのと聞かれました。そこは元々東京都が運営している都の障害者施設(知的・身体)で人事部の人との面接でした。こういう仕事は、言っちゃ悪いけど、他に仕事がなかったり、性格に難がある人が来るから、珍しいなと思い理由を聞きたいということでした。
今の話から分かるように、現場ではこういう認識な様です。

2つ目ですが、ケンゴさんが言った”寂しい”という感情です。
やはり人間誰しも寂しいという感情を持ちますし、私は全般的に寂しがり屋で、ただ友達にそこまで深く心を開けなかったので、彼女がずっとほしいと思っていました。そう思い出した時というのは、不登校・引きこもり真っ只中の最中で、家にいればそれは彼女なんか出来るわけ無いですよね(苦笑)

ですので、本当につらい時期でしたが、彼女を作ることを夢になんとか少しずつ歩みだすことが出来ましたし、努力するということを学べた気がします。

ですので、何でも人のせいにするのはその人の勝手だと思いますが、結局自分の成長のためにはならず、最後には自分が損をすることになってしまうんですよね。。。


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