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「パニック障害」10人に1人がかかる病の対処法 発達障害の人ほどパニック障害になりやすい

10人に1人がかかるといわれている「パニック障害」。いったい、どんな病気で、どう対処すればいいのでしょうか?

10人に1人がかかるといわれている「パニック障害」。いったい、どんな病気で、どう対処すればいいのでしょうか?(写真:プラナ/PIXTA)

10人に1人がかかるといわれている「パニック障害」。いったい、どんな症状で、どう対処すればいいのか? 「金スマ」「世界一受けたい授業」にも出演した、精神科医の岩波明氏が解説します。

パニック障害という病名は、最近になって使用されるようになったものです。それまでは、長らく「不安神経症」と呼ばれていました。1990年代に「パニック障害」という用語が登場すると、そのキャッチーな響きが一般に広く受け入れられ、短期間のうちに浸透しました。

パニック障害の症状は、身体的な異常がないにもかかわらず、突然の動悸、呼吸困難、発汗、震え、目まいなどのパニック発作を繰り返す、というものです。

パニック障害の負担

最も頻度の高い身体的な症状は、動悸と息苦しさです。発作の際には、強い不安や恐怖感を伴います。パニック発作そのものは、数分から数十分で治まります。病院の診察を受けても身体的な異常は見つかりません。それでも発作が起こっている最中は「このまま死んでしまうのではないか」「重大な病気にかかっているのではないか」と思うぐらい苦しいものです。

パニック障害の患者は、「また発作が起きるのではないか」という不安が強く、外出などの行動が制限されることもあります。これを「予期不安」といいます。

パニック発作は多くの場合、特定の場所や状況で誘発されます。とくに、電車や飛行機などの乗り物、エレベーターなどの閉鎖的な空間が誘因となりやすいのです。こうした「パニックを起こしやすい状況」に対して不安を感じ、それを避けるために外出を控えるようになります。

うつ病と同様に、パニック障害は、出現する頻度の高い一般的な疾患であり、多くの患者さんが存在しています。また、改善率、治癒率が良好で、比較的「良性」の疾患といえます。

パニック障害の診断基準においては、前述のパニック発作が繰り返し見られる状態をパニック障害と定めています。ある時点での患者数は人口の2~3%程度といわれています(生涯有病率はさらに高くなります)。パニック発作だけならば、10人に1人の割合で、一生に1度はパニック発作を起こすことが知られています。

なお、発達障害の人がパニック障害を起こす比率は非常に高く、発達障害のない人の倍だといわれています。また、うつ病とパニック障害を併存している例も非常に多く、パニック障害がうつ病の前駆症状として表れることもあります。その場合、パニック障害で病院にかかっているうちに、徐々にうつ病の症状が顕在化してくる、ということがしばしばみられています。

なぜパニック障害になるのか?

パニック障害に、先天的な要因がないわけではありません。遺伝的な素因が関与しているという報告がいくつもあります。しかし、原因らしいものがないのに発作を起こすこともありますし、ストレスがきっかけになることもあります。

さらに特定の物質や状態が、パニック発作を誘発することもあります。最も頻度が高い誘発物質は、コーヒーなどの中に含まれるカフェインです。その他、睡眠不足や過労が重なって、パニック発作が誘発されることがあります。アルコールもパニック発作の誘因になるので注意が必要です。

直接的な発症のきっかけについては、「悪条件が重なって」発症するというケースが多いようです。例えば、運悪く満員電車に閉じ込められて苦しくなった。動悸や息苦しさが強く出現したが、なかなか外に出られなかった。その後、そのときの経験を機に電車の中などにおいてパニック発作が起こるようになった、というケースです。

一度こうしたパニック発作が生じると、誘発物質や環境的な要因によって、繰り返し発作が起こりやすくなるのです。この現象は、人の心の動きを理解するうえで、貴重な材料となります。「パブロフの犬」についての研究をご存じの人も多いでしょう。犬に餌を与えると同時にブザーを鳴らすことを続けると、やがてブザーを鳴らすだけで犬は餌をもらえると思い込み、唾液を垂れ流すようになる、というものです。

ここでは、「ブザーが鳴ると餌がもらえる」という「学習」によって、ブザーという聴覚刺激と唾液腺という本来は関係のないシステムの間に、新しい関連性が生じています。これは、条件づけの学習と呼ばれています。

実は、パニック障害も同じような現象なのです。いうなれば「悪い学習」です。満員電車の中で、たまたま動悸と息苦しさが生じ、不安や恐怖感を覚えたとします。すると、「満員電車」と「動悸や息苦しさ、不安や恐怖感」という、本来は関係のない現象が結び付いてしまうのです。その結果、その人は電車に乗るだけで、あるいは駅に近づくだけで、パニック発作を起こすようになるのです。

治すためにはどうすればいい?

パニック障害は、薬物療法などによって完全に治る人もいます。また、とくに治療をしなくても、自然と症状がみられなくなる場合もあります。パニック障害の人が、自殺未遂や衝動行為などの問題行動に及ぶことはまれで、比較的治療しやすい疾患です。

ただし、完全に症状が消える症例は、おそらく全体の3分の1から半分程度の割合です。1~2割は抗うつ薬、抗不安薬を服用して症状をコントロールしながら暮らしていくことになります。

パニック障害という「悪い学習」を治すには、一時的に困難な状況に立ち向かうことも求められます。例えば、服薬をしながら、苦手な状況である満員電車に乗ってみることが治療の第一歩となることもあるのです。

もっともこの場合には、初めから長時間の乗車は困難であるので、1駅だけなど短時間から練習をしていくことが重要です。

日常、無理を強いられることが少ない自営業や主婦の方は、どうしても無理をする必要がないために治療が進まないことが多いようです。むしろ、毎日の通勤を余儀なくされる会社員のほうが、治療のモチベーションが高くなります。

一方で、「外出先でパニック発作を起こすのではないか」という恐怖から部屋に引きこもってしまう人もいます。あるいは、電車に乗らずに出勤できるよう、自転車で通える距離の職場に変えた人もいました。

とはいえ、前述した通り、パニック障害は多くの人にみられるポピュラーな疾患です。上司や産業医に説明すれば、理解を得やすいケースが多いのではないでしょうか。症状によっては、通勤ルートを変える、出勤時間を変えるといった対処を相談することが望ましいでしょう。

発作もやがて治まる

幸いにも、発達障害やうつ病とは異なり、パニック障害のみの症状によって業務に支障を来し、休職に至るということはほとんどないと思います。通勤などのつらさはありますが、パニック障害のために仕事を休むということにはならないということです。

実際には、「車内で具合が悪くなり倒れ、遅刻する」というケースは、まれではなくみられます。パニック発作の苦しみは「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどのものですが、臨時の薬を飲み、駅で休んでいるうちに発作は必ず治まります。救急車で運ばれ診察を受けることもありますが、救急病院に着いた頃には発作も治まっていて、「体には異常ありません」と医師から告げられるのです。


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