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ニーズにばらつき…障害者手帳、進まぬカード化 導入は自治体判断

カード型障害者手帳

身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳がカードで発行できるようになった。だが1年余りたっても導入を決めた自治体は少ない。携帯しやすくはなるが提示する手間はこれまでと変わらず、当事者ニーズにばらつきがあるためだ。費用対効果も見極めにくく、自治体は様子見をしている。

厚生労働省は省令を改正し、昨年4月からカード化を解禁した。導入は自治体の判断に任されている。プラスチック製で、運転免許証と同じ大きさ。導入する自治体では本人がカード製か従来の紙製かを選べる。

厚労省は「各自治体の導入状況は把握していない」という。西日本新聞が九州の7県と3政令市に取材したところ、本年度中の導入を決めたのは佐賀、大分両県だけ。佐賀県は「県民から一定の要望があった」としてシステム改修費など約1800万円を、大分県は「当事者団体への聞き取りでニーズが見られた」と約1400万円を本年度当初予算に盛り込んだ。

東京都も本年度中の導入を検討。大阪府から交付権限を移譲された箕面市も10月に導入すると発表した。

一方で財源面から首を横に振る自治体は多い。「国からの補助はなく、全てこちら持ち。慎重に考える必要がある」(長崎県)。マイナンバーカードと障害者手帳を一体化させる国の構想もあり、熊本県や大阪府は「二重投資は避けたい」「多くの自治体が一体化との兼ね合いで判断できずにいる」と打ち明ける。

当事者団体に聞いたりしたが「ニーズがなかった」との声も宮崎県や北九州市など複数あった。ある担当者は「そもそも厚労省は当事者の声をきちんと聞いたのか」と疑問を挟む。

 備忘録の役割も

当事者はどう感じているのだろう。精神疾患のある福岡県飯塚市の男性(64)は「カードだと使う時に周りから精神障害者と気付かれにくいかも。導入してほしい」と望む。県発行の手帳は大きく持ち歩きにくい上、バスや美術館で割引を受ける時は周囲の視線が気になるという。「ぱっと見て分かる物は避けたい」

カード化が解禁されたことは知らなかった。当事者団体に所属しているが、話題に上ることはなく、行政のニーズ調査もなかった。

一方、「障害者の生活と権利を守る福岡県連絡協議会」会長の石松周さん(70)=福岡市早良区=は「今の手帳のままでいい」と語る。四肢にまひがあり身体障害者手帳1級。同市の手帳は県より小ぶりで扱いやすい。部位ごとの等級や電動車いすの耐用年数なども記され、住所や障害の状態が変わると追記される。本人にとって備忘録の役割も果たしているという。

カードの内容は自治体に任されているが、厚労省が示す例では、プライバシー保護や欄が小さい関係で「視覚障害」などの障害種別と等級しか記載されない。「体の細かな状況を確認できない」と石松さん。

こうしたことから、箕面市はカードにQRコードを載せ、本人が携帯電話をかざせば、障害の詳しい情報を確認できるようにする。ただ追記や書き換えはできず、状況が変われば再発行が必要だ。

 困りごと解決を

知的障害者の療育手帳は以前からカード発行が可能で、2015年に導入した山口県では、取得者の3~4割が「出し入れしやすい」「雨や汚れに強い」とカードを選択。ただ厚労省によると導入は同県のみだ。

カード化が進まない背景について、北九州市立大の小賀久教授(障害者福祉論)は「当事者の困りごとが解決されないままだからではないか」と指摘する。カードでも紙でも、窓口に行って提示し、人力で割引計算してもらわなければならない手間は一緒だ。障害の内容を人に知られたくない当事者もいる。「交通系ICカードのように、機械にかざして割引が受けられる仕組みなら、持ちたい人も増える」と提案する。

障害者福祉に関わる多くの事業は国から原則5割の補助が出るが、今回はゼロ。小賀教授は「国は予算面の手当てをすべきだ。さらにカードの規格を統一し、ICチップを内蔵するなどして利便性を上げなければ、当事者に寄り添った改善とはいえない」と話している。

 (姫野一陽)

 【ワードBOX】障害者手帳

身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3種類があり、税金の減免や公共料金の割引などが受けられる。都道府県と政令市(身体障害者手帳は中核市も)が交付し、色や大きさは自治体で異なる。2019年3月現在、身体は約509万人、精神は約106万人、療育は約112万人が取得している。


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