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休日に動かない人ほど疲れが取れないワケ 逆に体を動かしたほうが回復を図れる

休みの日に家でぐっすり寝たい気持ちはわかりますが…

休みの日に家でぐっすり寝たい気持ちはわかりますが…(写真:zak/PIXTA)

日常的に忙しい日本人ビジネスパーソンの中には、慢性的な疲れを感じている人も少なくないでしょう。「パフォーマンス低下をもたらす“慢性的な疲れ”の原因は、働く時間の長さだけでなく、休み方にもある」と指摘するのは、スタンフォード大学スポーツ医局のアスレチックトレーナーで、『スタンフォード式 疲れない体』の著者・山田知生氏。「体を休めようと思ってやっていることが、実は逆に疲れを助長しているかもしれない」危険性を、各種データやスポーツ医学の観点から解説します。

「休日の数」自体は世界標準なのに疲れている日本人

「日本人は働きすぎだ」とよく言われますが、休日の日数も日本は少ないのでしょうか?

「データブック国際労働比較2017」によると、日本の年間休日日数は137.4日。これはイギリスとほぼ同じで、いちばん多いドイツやフランスでも145日ですから、休日の数そのものは少なくないことがわかります。

では、「休日の過ごし方」に目を向けると、どのような実態が見えてくるでしょうか?

忙しく働いた週末、できるだけ体力を使わないように、出掛けず家で過ごす人も多いのではないでしょうか。2014年に厚生労働省が実施した「実際の休日の過ごし方」調査によると、休みの日、「何もせずにゴロ寝で過ごす」人は25%、「インターネットをして過ごす人」は41.5%にも上るとのこと。

しかし、せっかく休みがあっても「家で寝ていたい」「休みの日くらい、体を動かさず、回復を図りたい」など、体を動かさずにじっとしていると、実は疲れは取れないどころかむしろ増大する可能性すら指摘されているのです。

人間の体が「じっとしている」のに適さないことは、さまざまな調査によって判明しています。たとえば「立っている」より「座っている」ほうが、体に負担が少ない気もしますが、内実は大きく異なります。

「座位行動研究の第一人者」といわれるオーストラリアのネヴィル・オーウェン博士によると、日本の成人は平均して1日に約7時間座っており、これは世界一の長さ。世界の平均は約5時間で、働きづめで席から離れられない“日本のオフィス”を象徴するかのようなデータです。

オーウェン博士によると、座ってばかりいると血流ばかりか代謝も悪くなり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病のリスクも高まるとのこと。アメリカでは「Sitting Kills You」という記事も報道され、スタンフォードの医学部も「座りっぱなしの勤務態勢の見直し」を唱えています。

「じっとしている」と脳が疲れを呼び込む

ノーベル生理学・医学賞の選考委員会があるスウェーデンのカロリンスカ研究所でリサーチャーとして活躍したアンダース・ハンセン氏によると、脳をはじめとする中枢神経はそもそも「体を移動させる」ためにできていて、原始時代からその構造はあまり変わっていないそうです。

しかし、コンピュータが仕事の大部分を担うようになった今、ビジネスパーソンは忙しければ忙しいほど、動かなくなっているのではないでしょうか? 

本来、体を動かすようにできている脳を有する人間が3時間以上座っていると、記憶力低下や注意散漫といった弊害が発生しはじめるといいます。これでは、生産性は上がるべくもありません。

「働きすぎて疲れた日」ほど、「体を動かせていない日」であることも多いのではないでしょうか。

また、日中に体をある程度動かさないと、睡眠に影響が出て、夜間のリカバリーもうまくいかないことが判明しています。

これは、日中じっとしていると、交感神経と副交感神経の交替がうまく行われず、結果自律神経が乱れて、夜にしっかり休めないため。そして夜に深い睡眠が取れなければ、体内の修復作業も妨げられることに。

「疲れないためにじっとしている」という作戦をとっていると、夜間に回復が捗らない分、反対に疲れやすくなるのです。

「動いていないから疲れておらず、眠らなくてもいい」わけでは決してありません。

日中の身体活動量が、グッスリ眠れるか否かも左右している、ということです。

人体はそもそも「疲れやすい」仕様になっている

加えて、体が完全に左右対称でないことも、人間という生物がそもそも何もしなくても疲れやすい特徴を備えている大きな要因になります。

たとえば、前回の記事「疲れやすい人は『呼吸』の重みをわかってない」で「疲れない体作り」に重要だと書いた「横隔膜」。よく見ると、右側のほうが厚く、大きなドーム型をしています。これは、横隔膜の右側下に、大きな肝臓が付着しているためです。

体全体で見ても、拳大の心臓やそれよりも小さい脾臓は体の左側にあって、臓器としてとても大きな肝臓は体の右側に配置されています。

このように内臓の配置が左右で違っているため、横隔膜以外の筋肉も影響を受けていることが考えられます。長年放っておけば、この「体内の左右差」によって体のバランスは崩れ、中枢神経と体の各部の連携が乱れ、少しの動作をするだけでも余計な負荷がかかってしまう「疲れやすい体」になってしまうというわけです。

何もしなくても疲れはたまるのですから、「抜こう」としないかぎり決して疲れは抜けてくれません。

じっとしているだけでは回復が図れないとすれば、どうやれば「体内の左右差」を克服して疲労を和らげることができるのでしょうか?

逆説的に聞こえるかもしれませんが、疲れを取るときこそ、体を動かすことが有効になります。

といっても、汗を大量にかくほど運動すると疲労は余計にたまるので、「ゆっくり走る」「泳ぐ」といった軽い有酸素運動を20分ほど行うのがベストとされています。

また、走る前に「軽くスキップを10回」「両足で飛んで両足で着地する動きを10回程度」行うことで、中枢神経を効果的に刺激して、体の各部と脳神経のズレを矯正してから運動できる効果も期待できます。

また、「疲れないためにじっとしている」よりも、体を軽く動かしたほうが、「血流が促進されて脳と体にたくさん酸素を運ぶことができ、疲労物質の対流を防ぐ」ことにもつながります。

私たちは、この一連の「動いて回復を図る」方法を、スタンフォードのスポーツチームの練習後のメニューに取り入れていて、「動的回復法」と呼んでいます。

疲れているときほど「何もやりたくない」と思うかもしれませんが、そんなときこそ、軽い有酸素運動をすれば疲れを翌日に持ち越さずに済みます。人間の体は、動くことでこそパフォーマンスを存分に発揮できるように設計されていて、これは「回復のパフォーマンス」でもまったく同じなのです。

「30分に1回」席を立つ

会社勤めだと、日中体を動かすことが難しい、というケースも多いでしょう。デスクからなかなか離れることができず、会社を抜けてジムになんて行けない。座りっぱなしで倦怠感を体全体に覚える……。

デスクワークが大半を占める労働環境においては、疲労を未然に防ぐ意味でも、理想は「30分に一度席を立つ」ことです。

トイレやコーヒーを入れに行くなどして「30分に1回」席を立つことができれば、それだけでも座り疲労を軽減することができます。

長時間の会議など、なかなかそれすら難しいときには、座ったままの状態で「かかとを上げ下げする動作」を15秒、「つま先を上下する動作」を15秒行ってください。ふくらはぎのポンプ作用に働きかけることで、全身の血の巡りの悪化を防ぎ、倦怠感を和らげることができます。

じっとしているよりも、足元を細かく動かすことを意識できれば、ダメージを最小化することにつながります。

スポーツ医学では「動いて回復する」のが主流

選手がプレー中にケガをしたとき、トレーナーがアイシングをする場面を見たことはありませんか。実は、アイシングには、「炎症を抑える」ほかに、「痛みをマヒさせる」という目的もあります。『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ひどいケガでないかぎり、ある程度体を動かしたほうが回復が早くなることはスポーツ医学でも確認されている事実。伸び縮みをするのが筋肉の自然なあり方なので、動かさないと筋肉はどうしても固まってしまうのです。そこでアイシングでマヒさせて、あえて少し歩かせたりしたほうが、筋肉という観点でも回復が多少早まるというわけです。

このように、スポーツ医学の世界で唱えられている「動的回復」は、脳・内臓・筋肉レベルで体のリカバリー機能を促進する作用があり、日常生活に取り入れることができれば、疲労回復効率と日中のパフォーマンスを確実にレベルアップさせることができるはずです。反対に、従来の「休む=じっとする」ままであれば、体のダメージを余計に増大させてしまうことになりかねないのです。


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