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「死ぬまで無職で大丈夫か」持ち家と5000万円でも消えない31歳娘の不安 父親は酒も旅行もやめて節約一筋

「死ぬまで無職で大丈夫か」持ち家と5000万円でも消えない31歳娘の不安

「自分は両親の死後も路頭に迷わずにすむのか」。Aさん(31歳・女性)は、高校を卒業してからほとんど働いたことがなく、家にひきこもっている。両親は娘のために生活を切り詰め、自宅に加えて、現金5000万円を相続させるつもりだ。それでもAさんの不安は消えない。家計相談を受けたファイナンシャルプランナーのアドバイスとは——。

写真=iStock.com/Alexey_M※写真はイメージです

「自分は両親の死後も路頭に迷わずにすむのか」

近畿地方のある県に両親と住む相談者のAさん(31歳女性)の悩みは、「私は、これから死ぬまで最低限の衣食住を満たす暮らしができるのだろうか」というものでした。

Aさんは中学時代にひきこもり状態になり、高校はなんとか卒業したものの、メンタルの不調が続き、10代後半にうつ病と診断されました。20代以降も、ほとんど働くことができず、

自分は両親の死後も路頭に迷わずにすむのか……。そんな不安な気持ちから少し前にファイナンシャル・プランナー(FP)に依頼して、今後のキャッシュフロー表の作成を依頼しましたが、数字が正しいか疑っていました。

なぜなら、このFPはひきこもりの人向けのキャッシュフロー表を作ったことがなく、信憑性に欠けるのではと感じたから。それで今回改めて筆者に相談をしたのです。

相談の当日、筆者のオフィスの場所がわかりづらかったら、最寄り駅から連絡してくださいと伝えていたため、父親(60歳・会社員)と一緒に来たAさんは、駅から電話をかけてきました。

迎えに行くべく、足早に駅に向かうと、駅前に2人で立っていました。筆者を見るなり、父親は深くお辞儀した後、「私はそちら(筆者オフィス)には伺いません。このあたりで時間をつぶしているので、娘をお願いします」とだけ言って、去っていきました。

「父は私を腫れ物に触るように接してきます」

オフィスに到着後、筆者が「お父様も一緒に来られたら良かったのにね」とAさんに話しかけると、「すみません、そういう人なのです。父はいまだに私とどう接して良いのかわかっておらず、腫れ物に触るように接してきます」と話しました。たしかに父親の顔には不安と期待が入り交じっている様子でした。

本題に入る前に少し雑談をしました。それで、わかったことがありました。

Aさんがひきこもりになった原因は、4歳上の姉(35・独立結婚し2児の母)と比較されたことだったそうです。真面目で聡明な姉と、ちょっとぼんやりしていたAさんは何においても常に比較されたそうです。Aさんはそれに耐えられず、中2の頃から外に出られなくなり、ひきこもるようになったとのことでした。

一戸建ての家と現金5000万円を相続予定でも消えぬ不安

まずは、最初に別のFPに作ってもらったというキャッシュフロー表を拝見しました。その内容に特に問題がありませんでした。両親の死後、Aさんがひとり暮らしをして90歳で亡くなるという条件でしたが、90歳時点で1000万円弱の現金が残ることになっていました。

親の相続については、Aさんの姉には、自宅購入時に両親はすでに1000万円を渡し、両親死後の相続時には1500万円の現金を相続するということになっていました。

一方、Aさんは現在両親と住む一戸建ての家(資産価値2500万円)と、姉が相続した分の残りの現金5000万円を相続するという話でした。姉妹が相続する現金計6500万円は、父親がこれから支給される予定の退職金や、これまでの蓄え、さらに今後の生活費を切り詰めてコツコツ貯めていく予定だということです。

札束

写真=iStock.com/gyro※写真はイメージです

このキャッシュフロー表で筆者がチェックしたポイントは次の点でした。

●今住んでいる戸建ての家をAさんが相続する

2年後に住宅ローンが完済するので、Aさんは最期までこの家があるから安心してよい、と親は強調したとのことでした。余裕があれば、Aさんが住みやすいようにリフォームも考える、とも言ったそうです。

●父親と母親(58歳・パート)は、最期まで自宅でAさんと一緒に生活する

両親の介護に関する支出についてはキャッシュフロー表では考慮されていませんでした。介護が必要な場合は、Aさんにお願いするということなのかもしれません。

●生活費は親子3人で月13万円

現在、現役で働く父親の年収は500万円、パートで働く母親の年収は60万円。リタイア後の年金収入は父親月24万円、母親6万円の予定。一方、支出のほうは、現在も、また両親のリタイア後も生活費(住宅ローン返済を除く)は月約13万円とする予定。Aさんがひきこもりの状態であることを考慮し、親子3人で食費4万円とぜいたくとは無縁な暮らしを送っています。旅行や外出、外食もできるだけ控え、父親はお酒をやめたそうです。

親子の生活費
●両親他界後の収入は月8万円のみ

Aさんは自宅のほかに現金約5000万円も相続する予定ですが、Aさんの障害年金の収入(1カ月あたり8万円前後)は少額であり、両親他界後(年金収入がない)の生活に関しては少々心配な金額になっています。

以上を踏まえ、筆者はAさんに対して、「90歳近くまで生きるのに、お金が枯渇することはないことは確かで、前任のFPの試算に大きな誤りはありません」と伝えました。ただし、これから話す2つのことが気がかりだとも付け加えました。

●自宅を必ずしもAさんが引き継がなくてもいい

Aさんにとって、自宅があることは安心材料です。しかし、一戸建てはひとりで住むには大きすぎるので、必ずしも自宅をAさんが引き継ぐ必要はなく、むしろ小さなマンションに移り住むことも選択肢としてもいい。

●両親の介護費用は必ずかかる

両親は、今は健康ですが、誰にも必ず老いと要介護のタイミングはやってきます。そのときに、治療費や入院費や施設費用や介護費用がかかるのは明確です。そのため、別資金として残しておくことを考える必要があります。金額は、施設を「ついのすみか」とするかどうか、などによって異なるので、元気なうちから両親に考えてもらったほうがよいです。

ただ、介護費用が発生した場合、相続時にAさんの手元に残る現金はこのキャッシュフロー表より減ると考えられ、最期まで資金が残るかの確認が必要となります。

障害年金の申請により、過去5年分の障害年金約500万円ももらった

Aさんは長年、就労経験がありませんでしたが、企業で働くことが不安、もしくは困難である人に働く場所を提供している「就労継続支援A型」事業所に3年前に登録して体調がいい時に働き始めました。月収は2万~3万円。これに加え、障害年金が月額約8万円はもらえるようになったので、少しは親に安心を感じてもらえているかもしれない、とAさん自身は考えていました。

また、障害年金の申請により、過去5年分の障害年金(約500万円)をさかのぼってもらったので、大きな金額が普通預金に入っていて、どのように保管しておくのが良いかわからないとのことでした。

Aさん自身、普通預金に大きな金額があると使い込んでしまうところがあるとのことでしたので、「では、目に見えないところに隠しましょう」と伝えしました。具体的には、銀行に預けるのであれば「定額貯金」として、簡単に引き出せないようにする。また、当面そのお金を使わないのであれば、定額貯金より金利がいい個人国債の購入など投資をするという選択肢もあると伝えました。

「実は私、今後やりたい事があります、家を出たいです」

だんだん緊張が解けてきたAさんは、「実は私、今後やりたい事があるのです」「家を出たいのです」と話し始めました。今日一番相談したかったことはこれか、と筆者が感じるほどのまっすぐな視線でした。

家を出たい理由。それは端的に言えば「誰にも干渉されない1人の時間がほしい」ということでした。筆者は言いました。

「その(家を出る)方向で進めて問題ないと思います。まずはやってみないと、どうなるかはわかりません。(家を出ると両親に)宣言して行動して、その後に微調整をしていけばよいのです。万一、行動してしんどくなったら、休みましょう。ご両親は、Aさんの体のこととお金のことが心配です。私はお金のことをしっかりお手伝いします。体のことは医師ではないのでわかりませんが、少しでもつらくなったら言ってください。そこで小休止すれば良いのです」

そのうえで、簡単な家計簿のシミュレーションを提示しました。家賃月3万5000円の賃貸アパートを借りることを想定して試算したので、月の家計で少し赤字になってしまうものの、ちょっとした工夫で成立する可能性は高いと伝えました。

ひとり暮らしの家計簿予想

これを聞くと、Aさんはとっても晴れやかな表情になり、「そうします!」と力強く言葉を発しました。

相談者からの電話「昨年に相談したAです。ひきこもりのAです」

初回相談の数カ月後、電話が鳴りました。

「昨年に相談したAです。ひきこもりのAです」
「あ、Aさん、覚えていますよ、お元気でしたか」
「はい。それで……ひとり暮らし始めました」
「おめでとうございます!」

2回目の相談内容は、

●お金をどのように管理したらよいかわからない
●家計簿がつけられない
●お金を使い過ぎているのかどうかがわからない

でした。

電話で話したときに、相談の日はひとり暮らしをしている賃貸アパートに来てください、とのことだったので、少しワクワクしながら伺いました。部屋には母親もいました。

開口一番、私は、「お金の管理をしっかりしようとしすぎると疲れます」と伝えしました。

管理となると、結果を集計し分析し、次にどうするかの対策を考えるまでしないと意味がないからです。「お金の管理」を初めてのひとり暮らしで実践するのはかなり難しいです。

そこで筆者が提案したのは、「ズボラ家計簿」です。やり方は至って簡単です。エクセル表の縦にレシートの金額と通帳から引き落としされている金額をひたすら入力して、1カ月たったら合計する、ただこれだけです。

これを数カ月繰り返すと、毎月合計でいくら使っているのかがわかります。

現在、Aさんには月初にメールで集計されたエクセルを送ってもらい、その集計を見て感じたことを文章で書いてもらっています。家計も徐々に安定してきて、シミュレーション通りとはいかないものの、親のサポートを受けつつ、新しい一歩を踏み出しています。

まだ始まったばかりのお金の管理ですが、これからも継続的に見守っていきたいと思います。


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