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日本の里親「世に知られていない」数々の真実 「=養子縁組」は間違い?自治体間に格差も

日本では里親のもとで暮らす子どもが少ない(写真:GARDEN Journalism)

10月4日は「里親の日」。終戦の5年後、1950年に里親制度の運用について都道府県知事に対して通知がなされたのが、10月4日だったといいます。当時は、戦争孤児が日本全国にあふれていたために整備された制度でした。そして今、様々な理由で親と暮らすことができない子どもたちの数は全国におよそ4万5000人いるとされていますが、平成29年3月末時点でその内の2万6449人が児童養護施設に身を寄せています(※1)。里親に委託された子どもの数は平成28年度末時点で5190人に留まっています(※2)。なぜ日本では里親のもとで暮らす子どもが少ないのでしょうか?

(※1:平成29年12月時点で、社会的養護(保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として、社会的に養護を行う)を必要としている子どもは、約4万5000人。平成29年12月厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」より。)
(※2:厚生労働省ホームページ「里親制度に関するデータ」より。)

J-WAVE「JAM THE WORLD」内の「UP CLOSE」というコーナーにて、GARDEN代表・堀潤が「日本こども支援協会」代表理事・岩朝しのぶさんにインタビューした内容から、日本においての里親の現状や、里親制度の啓発・支援等を続ける「日本こども支援協会」の取り組みについてお伝えします。

「里親=養子縁組」は間違い?

:ちょうど今から15年ほど前、NHK時代の僕の初任地は岡山でした。岡山には、孤児院を初めて作った、児童福祉の父とも言われる石井十次さんがいます。一方で、施設偏重のため里親が少ないのが問題だということで、岡山県でも里親を増やそうという取り組みを一生懸命していました。一度、岡山の里親の方にインタビューさせていただいたことがあります。保護された子どもたちは虐待を受けていた場合も多く、里親の皆さんの負担は大きく、本当に七転八倒されていました。「私はね、本当の親にはなれない。でもこう思うの。子どもたちの応援団にはなれる」とお話しされていたのが印象的でした。そのレポートのタイトルは、『私はあなたの応援団』にしたことを覚えています。でも、今も里親の数が足りないということは変わらないんですよね。なぜ里親の数が少ないのか、全体状況を含めてまず教えていただけますか?

岩朝:日本財団が調査したところ、日本では里親の認知度が圧倒的に低いということが分かりました(※3)。日本では、「里親=特別養子縁組」というイメージがあり、「子どもができない夫婦が利用するんでしょう」と考えている方も多くいます。今日本には、養子縁組はできないけど親とは暮らせないという子どもたちが約4万5000人いますが、その子どもたちに育ての親が必要だということがそもそも知られていないというのが、問題なのかなと思います。

(※3:“里親の認知については大半が「名前を聞いたことがある程度」と回答しており、あまり一般に浸透していない実態も浮き彫りになっています。”2018 年1月30 日 日本財団-「里親」意向に関する意識・実態調査-より。)

:世界の状況を見てみると、日本とは違い、子どもは家庭的な環境で育んであげることが大切だということで、主要なのは里親制度で、施設は補完していくような立場になっているんですよね。「諸外国における里親等委託率の状況(※4)」によると、里親委託率は2010年の段階で、日本が12%。韓国が43.6%。イタリア、ドイツ、フランス、イタリアが約5割。イギリス、アメリカ、香港は7割強。オーストラリアに関しては93.5%。国によって状況が全然違いますね。

(※4:”制度が異なるため、単純な比較はできないが、欧米主要国では、概ね半数以上が里親委託であるのに対し、日本では、施設:里親の比率が9:1となっており、施設養護への依存が高い現状にある。”平成26年3月厚生労働省「社会的養護の現状について」内「諸外国における里親等委託率の状況」より。)

岩朝:そうですね。日本では「里親=養子縁組」というイメージしかないのですが、他の国では、「養育里親(=Foster parent)」の存在が知られており、「養子縁組(Adoption)」、「養親(Adopter)」とは言葉がちゃんと分かれています。養子縁組(Adoption)は法律上の親子になっていく一方で、「養育里親(=Foster parent)」は養育する親になるということです。

「裕福でないとできない」というイメージ

:実際に里親になる事というのは、ある意味「メリット」もないと、なりたいという人は少ないかもしれません。以前取材した時には、「里親制度」が改定され運用が始まった頃でした。金銭的な支援も含まれていました。現在はどういう状況ですか?

岩朝:今は、社会的に擁護されている子どもたちの教育費というのは、施設であっても里親であっても、生活費は国から出ることになっています(※5)。金銭的な負担は特にないので、「裕福でないとできない」というイメージも払拭していきたいなと思っています(※6)。

(※5:里親に支給される手当は、里親手当、一般生活費、その他(幼稚園費、教育費、入進学支度金、就職、大学進学等支度費、医療費等)。平成29年12月厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」より。)
(※6:”「里親には子どもの生活費として養育費が支給される」(1.9%)、「養育費とは別に里親手当が支給される」(1.2%)、「2ヶ月などの短期間でもできる」(2.6%)「結婚していなくても、大人が2人以上住んでいればできる」(2.7%)といった、経済的なサポートを始めとした里親制度そのものや、「日本には里親を必要としている子どもが3万人いる」(3.2%)といった里親の現状については、ほとんど知られていないことも明らかになりました。”2018年1月30日 日本財団-「里親」意向に関する意識・実態調査-より。)

:先ほど「虐待」というキーワードを出しましたが、親御さんと暮らせない子どもたちは、そもそもどういう事情があるのでしょうか? いろんなケースがありそうですね。

岩朝:今多くなっているのは、例えば、親の精神疾患です。乳児を抱えたお母さんが重いうつ病を抱え、本人はあげないつもりはないものの、母乳をあげるのを忘れてしまう。自分のことでいっぱいいっぱいになってしまって、結果としてネグレクトという形で「育児放棄」と取られ、子どもが保護されてしまうというケースがありました。「よくなったら子どもを育てたいので」というお母さんもいるのですが、結果的に長期に渡ってお母さんが入院してしまったという子どもたちもたくさんいます。

:実際に子どもの虐待死で割合として多いのは、0歳〜3歳までの乳幼児だという調査もありますね(※7)。そういう意味で言うと、里親制度があることで親御さんの方も守ることができるということかもしれませんね。

(※7:”死亡時点における子どもの年齢について、平成26年度に把握した心中以外の虐待死事例では、「0歳」が27人(61.4%)で最も多く、3歳未満は32人(72.7%)と7割を超える状況であった。”平成28年9月厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」より。)

岩朝:そうなんです。誰だって子育てを練習したことはないので、行き詰まる事はあると思います。このラジオを聞いていらっしゃる方の中にも、育児でいっぱいいっぱいだという方もいるかもしれません。その時には、一時的にでも里親を利用するということも手段の1つに知っていただけたらなと思います。

(写真:GARDEN Journalism)

:そもそも、4万5000人という数字は、実態を表していると思いますか?

岩朝:そうですね。里親がいない、施設がいっぱいでこれ以上保護できないという状況も今の日本にはあるので、この数字に含まれない、保護されていない子どもが実際にはいると思います。

実際に里親になって感じた、日本の親権の強さ

:実際に、岩朝さん自身も里親としてお子さんと暮らしていらっしゃるそうですね。

岩朝:はい。一緒に暮らしてもう7年。子どもは11歳になりました。

:いかがですか?

岩朝:里親の皆さんはよく言うのですが、1回やったらやめられない。もちろんいいことばかりではないですが、里親としてずっとその子の成長を見られるのは、すごく楽しいです。今までは、「家族はみんな血が繋がってないけど、私たちは絆で繋がってるね」という話をしていたのですが、去年子どもが「そろそろ血も繋がっているかもしれないね」と言ったんですよ。それが、里親冥利に尽きる。血の繋がりがあるかもしれないと子どもが感じるほど、確かな愛情を子どもが感じているということが、人間の芯として支えになっていく。「この子は今こう感じてくれているんだな」と思うと、本当にやってよかったなと思います。

:児童虐待の話をする時に必ず課題点として取り上げられるのが、日本国における親権の強さです。親御さんの権利が強すぎるがために、せっかく保護し、預かった先でようやく安定してきたかなという時に、親御さんの対応によっては、また戻ってしまう、里親の方と引き離されてしまうという現状もありますよね。実際にはどうですか?

岩朝:多々あります。例えば、私が最初に委託を受けた子どもは、「家で楽しく暮らしている」という報告をお母さんが児童相談所から受け、「楽しく暮らしているのは許せない」ということですぐ迎えに来られました。懐いているというのが許せなかったということです。

:複雑ですね。それならば大切に育ててあげてと思うけれど、そうはできない環境もあったわけですよね。

岩朝:お母さんによっては、子どもの幸せを願うよりも先に自分の幸せを願っている方もいらっしゃいます。自分の都合や気分で子どもを振り回す。子どもの幸せを第一に考えていない親権者が子どもの足かせになり、子どもの人生を潰していくというのはありますね。

:岩朝さん自身は、親権の問題については、どうしていくべきだと思われていますか?

岩朝:とても難しい問題ですよね。例えば、虐待のニュースを見た時に、もっと早く親権を切ればいいのにと思いながらも、児童相談所の現状を見たり、実際に子どもたちの様子を見たりしていると、もし私が親権を決める権限を持っていると仮定した時に私は親権を切ることができるだろうかと考えたら、子どもの一生を決めることなので、勇気がいりますね。

里親研修に自治体格差、知識の底上げが必要

:里親の制度を充実させなくてはいけない理由は、どういう点だと考えていらっしゃいますか?

岩朝:子どもたちはいろいろな背景を持っているので、これからの里親は、もう少し養育レベル上げる必要があると思います。障害を持っているなど、養育しづらい子どもたちが増えてきているので、そういった子どもたちに対しての対応など、里親はもっとレベル上げていかなければなりません(※8)。今、善意だけで「里親をやりたい」という方が多いのですが、養育・福祉のプロである施設の職員さん達が今まで担ってきたものをこれから里親にスイッチするのであれば、やはり里親も専門的な知識をもう少し学んでいただかなければいけません。善意だけではできない範囲が増えてきています。

(※8:”社会的養護を必要とする児童においては、障害等のある児童が増加しており、児童養護施設においては28.5%が、障害ありとなっている。”平成29年12月厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課「社会的養育の推進に向けて」より。)

:岩朝さん自身、里親のトレーニングの部分はどうでしたか?

岩朝:私自身、研修でもっと学んでおけばよかったなと思ったことが多々あったので、私が講師として立つ時には、実践的なことをリアルに伝えています。

:直面して向き合ってきた中で得た経験をシェアされているんですね。以前、里親制度を取材した時には、ある程度研修も受けるという話は聞いたのですが、まだまだ十分ではないということでしょうか?

岩朝:はい。里親向けの研修はありますが、都道府県によって内容が違います。

:どんな違いがあるのですか?

岩朝:例えば、1日みっちり研修を受けないといけない都道府県もあれば、1日4時間程のレクチャーで、「あとはテキスト読んでください」というレベルのところも。本当の差が激しいので、できれば統一して欲しいと思います。統一して「これをやらなければいけない」ということがちゃんと決まっていれば、ある程度のレベルを担保していくことができる。ある一定の知識はないと、これから不和が多くなる心配があります。

:子どもたちは、自分から生まれ育つ場所を選べないですからね。

里親のマッチングにも自治体格差が

:日本において、子どもたちと里親とのマッチングは、具体的にどう行われているのですか? これも自治体によって違うのでしょうか?

岩朝:はい。各児童相談所が、その地域に登録している里親をよく知らないと、マッチングは実際難しい。データ上のマッチングではなく、やはり「この人にはあの子が合いそうだな」というマッチングでないと。実子さんがいる・いないでも環境が変わってきますし。実際にその里親を見たことがある、話したことがあるという方じゃないと、なかなか実際のマッチングは難しいと思うので、地域の児童相談所がそれぞれマッチングをやるというのは、仕方ないと思います。

:厚生労働省が里親委託に関する数値目標を発表しましたが、目標達成のために無理なマッチングが増加しているというような心配はないでしょうか(※9)。

(※9:”愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については概ね5年以内に、それ以外の就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託率75%以上を実現し、学童期以降は概ね10年以内を目途に里親委託率50%以上を実現する。”平成29年8月2日厚生労働省「新しい社会的養育ビジョン」より。)

岩朝:それが怖いなと思いますね。子どもの最善のためにマッチングしていくならいいのですが、目標値が設定されてしまって、それに対して数字を上げなければいけないというマッチングは無理が生じてくる。間違いがなければいいなという懸念はあります。

:何人くらい里親の数が必要なのでしょうか?

岩朝:基本的には、委託したい数の3倍は登録がないといけないと言われています。それぐらいないと、なかなか子どもに最善のマッチングはできないと思います(※10)(※11)。

(※10:平成28年時点で、登録里親数は11,405世帯、委託里親数は4,038世帯、委託児童数は5,190人となっている。厚生労働省ホームページ「里親制度に関するデータ」より。)
(※11:”全国20代~60代の男女の6.3%が「里親になってみたい」「どちらかというと里親になってみたい」と回答。”2018年1月30日 日本財団-「里親」意向に関する意識・実態調査-より。)

里親には里親特有のサポートが必要

:代表を務めるNPO法人「日本こども支援協会」では、具体的にどのような活動をされていらっしゃるのですか?

岩朝:啓蒙・啓発、政策提言をメインに活動しながら、里親のサポートも行っています。里親は、やはり里親特有の子育ての悩みが出てくる。同じ5歳の子を育てているのでも、そこに至るプロセスが全く違う。何ヶ月もかけてお腹で一緒に過ごして出産して母乳をあげてというところから始まった親子関係と、4歳から里親になって5歳になったというのでは、全くプロセスが違う。子育て相談の窓口に行ったところで、そのプロセスを分かって指導できる人はいないので、里親には里親特有のサポートが必要だと感じます。

:本当に子どもを守る社会を作ろうと思ったら、国でしっかり専門集団を作って行政の支援を充実させるべきだし、里親を育てていく教育の仕組みも必要。「日本こども支援協会」では、これから乗り越えるべき問題点として、里親不足、里親の質の向上、担い手としての意識の向上、委託後の支援体制などを指摘されていますね。

岩朝:そうですね。全国の里親と一丸となって、自分たちのレベルアップを自分たちで率先してやっていくこと、お互い交流を持ちながらサポートしていくということを、連携してやっています。

:最後にぜひ、10月4日「里親の日」に向けてのメッセージをください。

岩朝:今、社会的に養護が必要な子どもたちと同数、4万5000枚のチラシを日本全国で配布しています。4万5000人の子どもたちは、自分たちで自分たちの環境を変える力はないので、大人がこの子たちの未来を支えていくしかない。虐待のニュースで心を痛めているだけでは、子どもたちの未来は変わらないので、ぜひ自分のできることを見つけて欲しいと思います。例えば、自分が里親になることはできないけれど、里親を支援している団体を応援しようとか。年に1回、10月4日だけ自分も一緒に街頭に立とうとか。何かしらのアクションを皆さんが少しずつやることで、社会は変えられると思います。子どもたちの未来は本当に私たちの手にかかっているという強いメッセージ込めて、チラシを配っています。「日本こども支援協会」が日本全国で4万5000枚配布しているチラシ

(写真:GARDEN Journalism)

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