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不登校児を救い「若者をつなげる」支援の裏側 否定せずに1人の人間として大人がかかわる

「認定NPO法人D×P」理事長・今井紀明さん
「認定NPO法人D×P」理事長・今井紀明さん(写真:©︎認定NPO法人D×P)

文科省は先月25日(2018年度記事)、昨年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題」の速報値を発表しました。

小・中学校における不登校児童の数は14万4031人と、前年度に比べて約1万人増えて、統計開始以降、初めて14万人に達しました。過去最多を更新です。

不登校によって高校進学に必要な成績を得ることができず、進学や就職もしないまま非就業者になるケースも少なくありません。 一方で、小・中学校での不登校の経験と向き合い、通信制や定時制高校に進学して学びを続ける若者たちもいます。しかし、通信制高校の卒業生の約4割、定時制高校の卒業生の約3割が、進学も就職もしないまま卒業しています(全日制高校は5%です)。次の所属先が決まらないまま社会に放り出されているといえます。

GARDENではそうした若者たちの「つながる場」と「いきるシゴト」をつくろうと支援を続ける「認定NPO法人DxP(ディーピー)」の活動に注目しました。活動の輪を広げるために、クラウドファンディングを通じて資金集めを続ける代表の今井紀明さんに、今求められている支援は何か伺いました。

増加する不登校 いじめ、学力不振…「原因は複合的」

:2017年度に不登校した小中学生は14万4031人。5年連続で増加し、16年ぶりに過去最多を更新。その背景は何だと考えていらっしゃいますか?

今井:統計調査でも不登校の原因はさまざま出ています。たとえば、人間関係やいじめ、学力不振。さまざまな理由が複合的にあると思っています。聞いているかぎりではそうした原因も大きいと思うのですが、最近感じているのは、学校に行くニーズに対して根本的に疑問に思っている生徒さんが少しずつ出てきているということです。仮説ですが、そういう理由で通信制高校に行く子どもが増えているのかなと考えています。

:実際に、フリースクールやN高など、どこにいても勉強ができる環境づくりが進んできているなと感じますが、「学校だけが居場所じゃないよ」という理解が広がったことが背景の1つと見ているということでしょうか?

今井:そうですね。大きなパーセンテージは占めないかもしれませんが、それもあるかなと考えています。ただやはり、大きな要因としては人間関係の問題が大きいとは思います。いじめも認識件数がかなり上がってきていると思いますが、まだ対応しきれていないものもあります。

:いじめで言うと、からかいも含めていじめとしてカウントするなど、いじめの定義を広げてきたという背景もありますよね。逆に言うと、学校という枠組みの中で、そういう問題に対して対処しきれていないという状況もあるのでしょうか?

今井:そうですね。学校の先生方も対応する事項が増えたり、今までよりも短期間でしなきゃいけなかったりで、対応しきれないという事例も大きいと思います。家庭訪問も行きにくくなっています。

:どういうことですか?

今井:教育委員会の方から「長期労働の問題もあって、家庭訪問をするとかなり時間を取られるので、そこはなかなか対応しづらい」という話を聞いたことがあります。

:「認定NPO法人D×P」に通ってくる若者たちでは、どういう理由で不登校や引きこもりになったケースがあったのでしょうか?

だいたい原因は複合的

今井:千差万別ですね。不登校のケースで言うと、「授業に出なくてもテストの点数はほかの人よりもいい点数が取れるから、学校に行く必要がないんじゃないか」と話していた生徒もいました。親との関係性が響いて、親に反抗したいから学校に行かなくなったというケースもありました。いじめのケースでは、学校のクラスにいられなくなったというのはよく聞く話です。どのケースでも、単体の理由では不登校にならないのではないかと思っています。「人間関係で悩んでいてクラスに行きにくい中でも頑張っていたら、学校の先生が嫌いになって、結果的に学校に行かなくなった」という例もありました。

:学校の先生がうまくコミュニケーションを取れず、「こういう先生のところだったら、もう学校に行かなくていいか」ということもあるということですか?

今井:そうですね。もしくは、結果的に学力不振になってつまらなくなったから学校に行かなくなったということもありました。だいたい原因は複合的だと感じています。

不登校や引きこもりになる理由は千差万別だ(写真:©︎認定NPO法人D×P)

:今回のクラウドファンディングでは増床が理由とのこと。御団体のニーズがなぜ上昇しているのだと考えていますか?

民間だからできる、関係性づくりから始める草の根支援

今井:「認定NPO法人D×P」は、全国で初めて通信制高校・定時制高校で正規の授業(単位認定されるカリキュラム)を受け持っているNPO法人だと言われています。通信制や定時制高校の子どもたちの就職までのサポートを1年生から行っています。「なかなか全部の生徒に対応しきれない」という課題を学校の先生方は持っていらっしゃるのですが、なかなか僕たちのようなサポートを行う機関がありませんでした。

「認定NPO法人D×P」としては、先生方と協力して、学校のカリキュラムに入り、カフェを作って食事提供を行い、生徒の相談に乗り、就職までのサポートを手厚くやるという事業を行っています。高校が最後の砦。高校を卒業した後だと、たとえば引きこもりになってしまうとなかなかそこから脱出できなくなってしまう。だから、高校が最後の砦だと思っていて。不登校や高校中退の経験者が多い通信制、定時制にターゲットを絞って事業を行っています。高校が最後の砦だと思っている

(写真:Yusuke Kida ©︎認定NPO法人D×P)

:画一的な指導の中では、「100人いれば100通り」という対応ができないですよね。今井さんたちが入ることで、生徒一人ひとりに丁寧に向き合えるということですね。

:仕事のイメージがついた後、次のステージに上がっていくために、どういう方策を取られていらっしゃいますか?

今井:生徒の趣味ベース、特性ベースで動くことが多いですね。最近では、生徒たちをどんどんゲームの会社に就職させています。また、発達障害などの障害がある子であれば、あんまり人とかかわれないなどのその子に特性に合わせて、清掃業の就職につなげたこともありました。その手前として、インターンシップはすごく重要視しています。生徒を海外に送るなど体験を重視し、今まで見たことのない世界や大人と会う機会を大切にしています。今まで見たことのない世界や大人と会う機会を大切にしています

(写真:Yusuke Kida ©︎認定NPO法人D×P)

:今までどういう体験の場に送り出してきたのでしょうか?

今井:現在、年間に20人ほど海外に送り出しています。それはすべて寄付で行っています。たとえば、フィリピン、韓国、台湾、カンボジアなど、アジアの国々でのスタディツアーに送ることが多いです。経済的に厳しい家庭の子ばかりを対象にしており、チャレンジしたくてもなかなかできなかった子たちを全国から募集し、選抜しています。「World Challenge募金」を通して行っています。

すべてのケースでうまくいくわけではないけれど

:その体験が、彼らの未来に何を与えると思っていらっしゃいますか?

今井:僕らが支援しているケースがすべてうまくいくわけではありません。ただ、先日フィリピンに発った子は、「国際交流NGOピースボート」で船旅をした後、フィリピンの大学に進学することを決めました。自分ですべて手続きしたのですが、今はその後の未来がすごく楽しみです。

「大学進学しよう」と思うきっかけになったということはよく聞きます。「自分も努力してみよう」と思い進路が変わった子は多いです。いちばんうれしかったケースで言うと、障害者施設で働くしかないと大学に行くのをあきらめたていた聴覚障害の子がいました。しかし、海外に送ったことで教員になると決意し、大学に進学しました。進路を変えた事例としては大きかったです。

:未来の選択肢を広げる体験を用意するというのは、いいですね。日常の限られた空間にいたら想像がつかないですよね。

今井:そうですね。「認定NPO法人D×P」が強いのは、学校のカリキュラムの中で授業を持っていることです。なかなか会えない高校中退や不登校の子たちと、授業を通して2カ月間かけて関係性が築ける。そこで出会った子どもたちを海外に連れて行ったり、プログラミングキャンプに連れて行ったり。

:逆に、うまくいかないケースはありますか?

今井:かかわりたくても授業に参加していないこともあります。1割くらいの生徒が欠席するため、その場合関係性をつくることができません。ほかのアプローチ方法を考えなければいけないと思っています。また、高校中退を考えている生徒は、個人情報保護の観点でアプローチできない。学校の中にいてもアプローチできない子がまだまだいます。

同じ経験を持つ大人が、「否定せず」かかわる

:細かいニーズに対応していくには人材確保も必要になってくると思いますが、「認定NPO法人D×P」ではその点はどうしているのでしょうか?

今井:民間企業から移ってくる人もいます。ボランティアを経験した後に正職員になったり、副業で勤務していたり、インターンだったり。現在、全体で34人。そのうち正社員が8人で、それ以外はインターンのメンバーです。SNSを通してボランティアで参加して、そこからインターンになっているケースも多いです。約250人いるボランティアの3〜4割が高校中退、不登校、鬱など、生徒と同じ経験をしている

(写真:Yusuke Kida ©︎認定NPO法人D×P)

:どういうモチベーションで応募して来られるのでしょうか?

今井:約250人いるボランティアの中で、7〜8割が社会人です。そして、3〜4割が高校中退、不登校、鬱など、生徒と同じ経験しています。「高校生や学校現場にかかわりたい」、もしくは「自分の経験を役立てたい」という方が多いですね。

:実際に同じ経験を持っていて、同じ目線で語ってくれる大人がいるというのはいいですね。

今井:そうですね。同じ目線というより、否定せずにかかわる、年齢にこだわらずに一人の大人としてかかわるというのが「認定NPO法人D×P」の基本姿勢として大切なので、それに共感してくれるメンバーを求めています。

:「一人の大人としてかかわる」というのはどういう意味ですか?

今井:「一人の人間として」の方が正しいかもしれないですね。生徒たちが、寝てしまうなど、いわゆる社会通念上は失礼だとされている態度でいるときに、それを「非常識だ」といって否定せず、まずは受け入れられるか。自分の経験や状況を本音で語れるか、というのは大切だと思います。

意欲を向上させていくまでにかかる時間は?

:関係を築いて、心を開いて、意欲を向上させていくまでに、1人当たりのどれくらい時間かかるのでしょうか?

今井:最低でも4回の授業があるのですが、生徒と深い話をする中で、4回の授業でも人とのかかわりを作れます。

:4回の中で話せるようになると言うのは、似たバックグラウンドを持った大人が自分の体験を披露しながら生徒と向き合うからなんでしょうか?必ずしも似たバックグラウンドを持っている必要はない

(写真:©︎認定NPO法人D×P)

今井:必ずしも似ている必要はありません。僕が授業に出た際に出会った生徒は、1回目の授業では寝ていて、ずっと僕のことを「お前なんかいらん」と言っていました。しかし、2、3回目になって「授業がおもしろそうだ」と参加してくれて、4回目には悩んでいることや今後の方向性を語ってくれたということがありました。

:何がその生徒さんのスイッチを押したのでしょうか?

今井:「対等に扱ってくれている」とか、「話を聞いてくれそうだな」という雰囲気は見ている気がします。

「一人ひとりの若者が希望を持てる社会を」

:不登校やひきこもりへの対応は十分でしょうか? 全国的に、働く意欲や機会、社会との接続を失っている若者たちが放置された状態が続いていくと、未来はどうなっていくと考えていらっしゃいますか?

今井:少子化で働く若者が減るというのは、企業や経済活動にも影響すると思います。仮に本人たちが望んでいるのに働けていないとしたら、本人たちは希望がなくきつい状況に陥ってしまう。経済的にも、本人たちの経済状況、貧困状態にも結び付いていくと思います。それはかなり大きな問題になってくるだろうと考えています。

:実際に、40代、50代の引きこもりの問題が深刻になってきています。固定化されたら将来にわたって大変ですよね。

今井:そうですね。特に日本の場合、固定化しやすい。いったん孤立すると、なかなかそこから動けないということが実際にあります。

:それは、雇用の流動性が乏しいからでしょうか?

今井:それもありますし、周りに助けを求められないというのも要因です。親、先生、さらに友達からも否定され身動きが取れなくなってしまったら、なかなかそこから一人の力で上がっていくのはしんどいと思います。

:海外にルーツを持つ子どもたちも増えてきていますし、セクシャリティについて悩みを抱えたまま孤立しているLGBTQの子どもたちもまだまだ多いと思います。今後の課題として思うところありますか?

今井:そうですね。外国人支援もLGBT支援もどちらもかかわっていますが、外国人支援はまだまだこれから。LGBT支援では、特に高卒のトランスジェンダーの子どもたちの就職環境がまったく整っていない。現実的に僕もぶち当たった問題です。トランスジェンダーの子でも、大卒であればLGBTフレンドリーの企業がある程度あると思うのですが、高卒のLGBT フレンドリー企業はまだまだ見えてきません。一人ひとりの若者が希望を持てる社会を

(写真:©︎認定NPO法人D×P)

:最後に、クラウドファンディングを通じて何を伝えたいですか?

今井:一人ひとりの若者が希望を持てる社会を一緒に作っていくというのが大切だなと感じています。今事務所を増設することで、支えられる生徒の数をどんどん広げていくことができる。若者支援は、社会保障費も上がってくるので、これからどんどん行政から支援を得にくくなるのではないかと懸念しています。だからこそ、民間がサポートしていかないと厳しくなる。僕たちがやっていかないと、少子化なのに若者が苦しんでいる状況が続いていく。それを解決するために、皆さんの力をお借りしたいなと思います。


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