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30歳臨床心理士の彼が味わう金と恋愛のリアル 結婚願望なし、貯金は少ないが執着はしない

臨床心理士として働く琢磨さん

臨床心理士として働く琢磨さん(仮名、筆者撮影)

一般的に30歳は節目の年と言われている。今の30歳は1988年、1989年生まれ。景気のいい時代を知らない現在の30歳は、お金に関してどんな価値観を抱いているのか。大成功をした著名な人ばかり注目されがちだが、等身大の人にこそ共感が集まる時代でもある。30歳とお金の向き合い方について洗い出す連載、第11回。

現在、発達障害のある子どもを支援する施設で働いている琢磨さん(仮名)。臨床心理士の資格を持ち、以前も資格を生かせるクリニックで勤務していた。琢磨さんは九州出身だが、父親が転勤族で母は専業主婦だったため、幼い頃は全国各地を転々とする日々だった。

転校の多い転勤族の子どもの中には「どうせすぐ転校するから」と学校の友達と深く付き合わず卑屈な性格になってしまうケースもある。琢磨さんの兄はそのタイプだったようだが、彼自身はその都度うまく人間関係を築いていたという。

「小学生の頃は必要なときだけお小遣いをもらっていましたが、月1000円程度だったと思います。使い道も駄菓子を買う程度でした」

この取材を続けていると、小学生時代はお小遣いの使い道があまりなかったという人ばかりだ。筆者自身も小学校高学年までは確かに駄菓子を買う程度だった。また、筆者が小学生の頃は、「テストで100点を取ったらゲームを買ってもらえる」「家の手伝いをしたら500円もらえる」、といった何かと交換条件の家庭が多かった。

離婚家庭の子どもの性格の変化に興味を持つ

転勤族家庭の琢磨さんだったが、中学時代以降は運よく転校もなく、東京都内の公立校でサッカー部に入部。月5000円~1万円のお小遣いをもらい、部活の遠征費用に充てたり、漫画やCD、ゲームを買ったりした。

「高校は推薦で東京都内の自宅に近い私立高に入学しました。大学までエスカレーターの学校で、兄貴もその高校に通っていたのでどんな学校か知っていましたし。サッカー部に入部しましたが、練習がキツくて1週間でやめちゃいました。そして、コンビニやサンドイッチ売りのアルバイトをして、月6万円くらい稼いで原宿に遊びに行ったり、あとパンクにハマったので、ライブハウスに入り浸っていました」

高校に入ってしばらくして、琢磨さんは臨床心理士になりたいという夢を持った。きっかけは、周りで離婚をする家庭が多かったことだ。離婚家庭の子どもは、やたらハイになる人が多かったという。

また、身近な人が自死や自傷行為をしていたことから、心理学に興味を抱いた。そして、エスカレーター式で上がった大学では心理学の勉強に打ち込みつつ、アルバイトをして月15万円ほど稼いだ。

「臨床心理士は民間資格なのですが、大学院に行かないとほぼ取れないと思っていいです。精神科医が臨床をやって大学院に行かなくても取れるケースもありますが、ほとんどの人は大学院に2年通って臨床心理士の資格を受験できるカリキュラムを受けないといけません」

新卒で入った職場は休日も休んだ気にならず

大学院に2年通って無事臨床心理士の資格を取った琢磨さん。通常の新卒一括採用のような就活はせず、大学院でお世話になった講師の紹介で、とあるクリニックに入った。通える範囲だったので実家暮らしをしていた。

「そのクリニックでの仕事は、主にカウンセリングです。入ったときの初任給は手取り20万円くらいでした。そして、何より労働環境がよくなくて……。9時頃出勤して残業を0時頃までしても残業代はつきませんでした。休憩もほぼなくて、食事も10分ほどでかきこむ状態。あと、電話のカウンセリングもやっていたので、休日でも携帯に相談電話がかかってくるんです。例えば『死にたい』とか。だから休日も心が休まりませんし、携帯電話代も自腹でした。そのクリニックには5年間勤めましたがボーナスも出ませんでした」

その後、転職した琢磨さん。資格があるので転職はそう苦労しなかったと語る。今は、冒頭でもお伝えしたとおり、発達障害などの障害のある子どもを支援する施設で働いている。

「転職して労働面の環境はぐっとよくなりました。月の手取りが21万5000円で、たいてい残業をするので残業代がついて28万円ほど。ボーナスも2カ月分出ます。福利厚生も充実していて、今は1時間の休憩が取れるし、残業も10分単位でつけられます。年収にすると450万円です。今の職場は以前の職場のように『死にたい』という相談電話がかかってくることはないので、安心感もあります」

転職後の現在は、友人とルームシェアをしている。家賃と光熱費は折半で、1人当たり家賃は8万5000円、光熱費は1万円ほどだ。休日はライブハウスに行ったりゲームをしたり、本を読んだりして過ごしている。ただ、長期休暇が取れる雰囲気ではない。担当している面接を誰かに代わってもらわなければならず、心理的負担となるからだ。もし長期休暇が取れたら、お酒が好きなため酒蔵の見学や、海外旅行に行ってみたいとのことだった。

「学生時代はまったくお金の管理ができず散財しまくっていたのですが、今は奨学金400万円を無事完済しました。今の貯金は50万円しかありませんが、欲しいものとかあまりないんですよね。車にも興味がないし。お金は十分にもらえているけど、今、仕事への充実感もそれほどなく、『すげぇ楽しい!』とか思わないんですよね。もっとお金をもらえればそりゃうれしいけど、そこまでの目標がないというか、お金をもらうためにこうしたい!という気持ちがなくてマイペースというか。

今は子ども向けのアプローチをしていますが、どちらかというと僕は大人向けのカウンセリングをやりたいんです。だから、どこかいい職場があれば転職したいとつねに考えてはいます。

あと、臨床心理士って経験年数が条件に入ってくるところが多いんです。こないだ、年収700万円で企業のストレスマネジメントをやっているクリニックに目がいったのですが、経験年数8年以上が条件でした。仕事内容としてはやれることばかりだったのですが、経験年数で弾かれちゃいました」

結婚したくないけど子どもだけ欲しい

あまり欲のない印象を受ける琢磨さんに、結婚願望はあるのか聞いてみた。

「20代前半は結婚しようと決めている人がいましたが、僕が大学院に行っているのをすごく嫌がって『学生をやめて働け』と言われたんです。それで、『無理です』と。今、彼女はいませんし、とくに結婚願望はありません。歪んでいると言われそうですが、結婚はしたくないけど子どもだけは欲しいです。きっと、結婚して奥さんがいたら教育に関して意見がぶつかると思うんです。

仕事柄、心理的な面で捉えてしまい『こういうことは子どものために言わないほうがいい』といったようなことを奥さんに言ってしまったらと考えると、子どもだけ欲しい。自分も親にされて嫌だったことがあるので、それをしたくない。血がつながってたらうれしいですけど、養子でもかまいません。でも養子の審査ってすごく厳しいんですよね……」

以前取材したフリーライターの恭平さんも、「養子でもいいから子どもが欲しい」と言っていた。筆者自身は自分の性格上、育児ノイローゼになりそうな予感がしているのでそこまで渇望はしていないが、子どもがいたらいたで楽しそうだなとは思う。そして、現実的に考えると子育てにはお金がかかる。

筆者や周りの友人たちはリーマンショックによる不況で、就活に苦労した人が多かったが、琢磨さんの場合、資格のおかげでスルッと就職できている。この世代の全員が就活に苦労したわけではないのと、やはり仕事に直接つながる資格は強いのだとうらやましくも感じた。


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