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27歳「発達障害」の彼が会社で見付けた居場所 イオン子会社で働きながら学んだこと

まいばすけっとで働く大谷実さん27歳
まいばすけっとで働く大谷実さん(仮名・27歳)。発達障害を抱えながらどう働いているのだろうか(撮影:今井康一)

今回、東京や神奈川の関東圏を中心に展開している「まいばすけっと株式会社」の障害者枠での就労者に話を聞いた。

「まいばすけっと」は、イオングループが展開する都市型の小規模スーパーマーケットだ。2018年に東京都と神奈川県で700店を突破し、今後は2000店を目指しているという。

実は障害者雇用に力を入れ始めたのは2015年から。2017年9月から働き始めた大谷実さん(仮名・27歳)は、品物を店内に陳列する「キャラバン隊」チームで働いている。チームは全員が障害者で、発達障害3名、知的障害1名、統合失調症1名、強迫性障害1名、不安障害1名の計7名で構成されている。

「7年前、20歳のときに発達障害だとわかり障害者手帳をもらいました。それまでは躁になったり鬱になったり、気分の波が激しかったですね。思い起こせば中学のときからいろいろな病院に行っていました。中学校のとき、自分のことがどうしてもわからないというか、説明ができないことがあって悩んでいました。感情を上手にコントロールできなくて喧嘩になったりして、ますます状況が悪くなってしまったりしましたね」

人間関係で無理をした結果、大学を中退

中高一貫の進学校に進み、都内の私立大学に進学するが、大学1年のときに勉学と人間関係に苦しんで不適応を起こし、学校に通えなくなって中退してしまう。精神科を受診した結果、発達障害と診断された。

「その当時、1人でいることがすごく怖かったんです。自分が障害者だったらみんなが離れていくんじゃないかっていう恐怖心もありました。だから大学では友達といるようにしたのですが、グループの友達が、『1人になっている子って、すごくかわいそうで浮いてる感じがする』とか陰口を言ってたんです。

自分が言われたらどうしようという恐怖感で、そのグループ以外に対しても、必死に1人じゃないところを見せて、その輪に入るようにしていたんですけれども、だんだんと他人の顔色ばかりうかがっていることに疲れてしまって、そのうち大学の門のところで倒れてしまい、中に入れなくなったんです」

医師の診断は、注意欠如多動性障害(ADHD)に自閉症スペクトラム(ASD)を併せ持っているとのことだった。

発達障害はいくつか種類があるが、大きくは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」の3つに分類される。どの種類の発達障害なのかを見分けるために、さまざまな診断基準や指標が設けられている。とはいえ、その現れ方は人によって違っており、単独の障害として現れる場合もあれば、彼のように複数の障害を併存している場合もあるのだ。まいばすけっとの外観

(撮影:今井康一)

ADHDは、「不注意」「衝動性」「多動性」などの特性があり、「落ち着きがない」「よく考えずに行動する」「物をよくなくす」「忘れ物が多い」など、行動面に特徴がある。ASDの主な特性としては、「コミュニケーションの障害」「社会的なやり取りの障害」「こだわり行動」の3つがある。具体的には「社会的な人間関係を築くのが難しい」「他人とのコミュニケーションがとりにくい」「活動や興味の範囲が狭くこだわりが強い」などが挙げられる。

結局、彼は大学中退後、障害者の支援施設を経て、いくつかの会社での実習を経験して「まいばすけっと」へ入社することができた。これらの特性を併せ持っていた場合、雇用を続けるのは非常に難しいという判断を下す企業もある中、彼はどのようなモチベーションで仕事をしているのだろうか。

「最初に実習に行ったある会社で、最後の日に教育の担当者から『あなたにはお金なんか払いたくない』って言われたんです。他の人にも結構厳しいことを言う人だったんですけども、すごくショックだったですね。これまで生きてきたことはいったい何だったんだろうと考えました。その後も他の企業の実習も回ったんですが、自分はこれから本当にきちっと働いていけるのかと考えました。そこで僕は相手から来てくれてよかったと思ってくれる人になりたいと。そういう意識が大きくなったんです」

厳しい言葉に負けず、逆に糧にした大谷さん

障害者雇用の場合、支援制度・助成措置として「職場実習」がある。彼の場合、最初の職場実習で厳しいことを言われ、また、言われたことを必要以上に強く受け取りやすいという特性もあるため、かなり深くヘこんでしまったという。しかし、その経験が糧となり、働く意欲が膨らんでいったようだ。

「最初の頃は厳しいことも言われたため、きちっとしようと思って、自分の中ではだいぶ無理していたところもありました。その後、『まいばすけっと』の実習に行ったときに、まるで天国のように感じて、息をするのも楽だと感じましたね。働くことがうれしくて仕方ないっていう感じでした」

周囲と協調しながら社会に貢献しているという実感が、何より自信になったという。今では家にいるよりも仕事をしていた方が楽に感じるという。働き始めたときは、週5日で1日6時間労働だったのが、今では週5日で8時間労働に増えている。

しかし、発達障害ならではの苦悩も見え隠れする。仕事中に他の障害の同僚にイライラするときも多かったという。

「僕が所属している陳列チームのキャラバン隊は、障害者雇用で入ってきた人たちなので、僕よりもすごく重い人とかもいます。仕事に対する取り組み方が自分と違うと、あの人はなんでああなんだろうと、それが不満として募ってしまったことがあります」大谷さん

(撮影:今井康一)

チームなので連帯責任を意識するのは当たり前だが、ASDの特徴として、自分が納得したルールは、誰であっても守ることを要求するという特性が出ている。

「例えば極端に作業する速度が遅かったり、力仕事が難しかったり、トイレや休憩のタイミングがわからない人がいると、イライラが募ります。僕たちは自分の作業が終わったら、他の人を手伝うのも仕事のひとつなのですが、できない人もいます。それでまたイライラが加わって、悩みの種になってしまうんです」

大谷さんはある日、仕事を覚えるのが難しい同僚についに怒鳴ってしまったという。頭ではわかっているが、怒鳴ってしまった後で後悔し、その後相手に謝罪したという。ADHDの特性でもある衝動性が出てしまったのだが、この同僚は他の障害の特性で、何度も同じ確認行為を繰り返してしまうというのだ。

「その後、許してはくれたんですが、リーダーに僕のことを怖いですよねって言われてしまって。怒鳴ってしまったことが大きな原因だったんだってわかったんです。仕事を続けていくうちに、自分にとってのハードルは、仕事よりも人間関係の方が大きなウェイトを占めているなと思いました」

発達障害の人にとっては、仕事を覚えるだけで大変なことなのだが、チームでの作業となると、人間関係の構築という、未知の領域にも足を踏み入れなければならないのだ。

自分の長所と短所を把握し、周知してもらう

そこで経験からこれから就職しようと思っている発達障害の人たちへのアドバイスを訊いてみた。

「まず自分の長所と短所を理解することが大切だと思います。長所をどの仕事に活かせるかを意識する。もしくは短所があるんだったら、その短所に対してどのような対策を自分でとっているか、事前に具体的に意識しておくと、その後で違ってくると思います。

同時に職場はみんな初対面の人だから、前もって会社に伝えておかないと、周りの人たちは感じ取れずに、言ってくれないとわからない、ってなります。そのうえでいちばん自分に合った仕事を探してほしいと思います」

発達障害を持っている人の特性の現れ方はそれぞれだ。個々の能力、親の育て方、周囲の理解や対応の仕方など、環境要因によっても大きく異なってくる。それらの相互作用によって生じる問題や解決方法については、正式な対応マニュアルがないのが実情で、個々の企業が取り組んでいかなければならない。同じ障害を抱えていても皆が同一ではないのだ。

人間関係をうまく築けるかどうかは、企業側が発達障害の特性について、どれくらい数多くの症例を理解しているかによるところが大きいのである。


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