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親が子を「欠けた月」と見るから不幸せになる 家で過ごす時間が少ない父親にできること

精神科医でYSこころのクリニック院長の宮島賢也氏

精神科医でYSこころのクリニック院長の宮島賢也氏

この記事は、世の小中学生が置かれたそんな生活環境をふまえつつ、新刊『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』を著した精神科医・宮島賢也氏に、子どものメンタルを支えるため、「特に父親はどうすべきか」を教えていただきます。宮島医師は、かつて7年間うつを患っていた経験を持っています。

子どもとのコミュニケーションで大切な考え方

以前よりも“イクメン”が増えたと言われ、そう実感する人も増えているでしょう。しかし依然として、仕事で帰宅が遅く、母親に比べてお子さんと過ごす時間が圧倒的に少ないという父親もかなり多いはずです。

そんな父親が、子育てにおいてできることとは、いったい何なのでしょうか。私は医師として多くの親子に会い、お話をしますが、たまにしかお子さんと一緒にいられなかったとしても、その「たまの時間」を大事にする意識を持てればいいと思い、そう伝えています。

父親の場合、母親と比較して子どもへの愛情表現が苦手という人も多いようですが、そのときそのときの素直な気持ちで接すれば、基本、大丈夫です。子どもはちゃんと、こちらの気持ちを察しています。

ただし、ご自身と職場との関係性を見たとき、自己犠牲や滅私奉公ではなく、適度に距離を置いた関係がベターでしょう。「必死のエネルギー」ではなく「喜びのエネルギー」で仕事に向き合うと、人間関係を含め、いろいろなことがうまく回ったりするものです。それと同じエネルギーでお子さんや奥さんと接するのです。

思春期の娘さんの場合、異性である父親を避けたり、汚いものでも扱うように接してくる場合もありますが、気をつかい、無理して媚びる必要なんてありません。たまにであっても、娘さんが何か話してきたときは聞いてあげればいいですし、娘さんが話したくなさそうなときには、そのまま話さなくていい。

これは息子さんの場合も同じですが、たまに話すだけにもかかわらず、説教だったり小言だったりするから、子どもにウザがられたりするのです。

お子さんが話をしてきたとき、父親として「聞く」ポイントは、
・何を言ってきても否定しない
・説教をしない
・自分の考えを押しつけない
・最後まで言わせる
・話をとらない
・自分の言いたいことを言わない

です。これは母親も同じでしょう。

「うちの夫、発達障害だと思うんです」

お子さんの発達障害を心配して私のクリニックに来られるお母さんが、「先生、うちの夫も発達障害なんじゃないかと……」とおっしゃること、実は珍しくありません。冗談ではなく、本気でそう思っていらっしゃるのです。

その理由となっているのは、「夫が私の気持ちをまったく理解してくれない」「私の気持ちを察することができない」というもの。でも皮肉なことに、母親がこういう思いでご主人に接していると、お子さんも見事に父親と似た心の症状を示してきます。

私はこういうケースに相対したとき、お子さんをどうこうするより先に、まずはご夫婦で、ご自身の育てられ方や過去の記憶を振り返っていただいています。その際にお伝えするのが「満月理論」という考え方です。

この「満月理論」は、私のクリニックにおける治療の土台となる理論で、うつなど心の不調に苦しむ人だけのものではありません。むしろ、今子育てに悩んでいる親御さんや、家族の問題を抱えている人にこそ知っておいてほしい考え方です。ざっと説明しましょう。

本来、「三日月」という月は存在しない

夜空を見上げると、日によっては三日月が浮かんでいます。でも、実は「三日月」という形の月はありません。月はもともとまん丸の「満月」。それは誰でも知っているはずです。地球からだと、太陽の光の反射具合でつねには「まん丸」に見えないだけなのです。

満月が勝手に形を変えて三日月になるわけではなく、私たちの目にそう見えているだけ。つまり、三日月に見えるのは人間の認識の世界の中だけのこと。月はもともとまん丸で、「完全で完璧な存在」なのです。

それを、そっくりそのまま人間に置き換えてみましょう。例えば、あなたの身近に、仲のいいAさん、そしてあまり気が合わないBさんがいたとします。私たちは心の中で「Aさんはこんな人(だから好き)」「Bさんはこんな人(だから嫌い)」と認識しています。

でもそれは、勝手にあなたが認識しているにすぎません。あくまであなたの認識の中でのAさんBさんにすぎず、本当のAさんBさんではないのです。

あなたが好きであろうが嫌いであろうが、どんな人ももともと、まん丸の完全で完璧な人間。そのような思いを持って人に接すると、人間関係の悩みは、実は意外なほど簡単に軽減されるのです。

ポイントは、「この人は満月(完璧)だ」と頭で考えるのではなく、「もともと完璧なのだ」という「前提」からスタートすること。少しわかりにくいかもしれませんが、「三日月なんてない、もともと満月」だということは、「前提」として理解できるはずです。人間もそのように捉えるわけです。

子どもの「自己肯定感」を引き出すのが父親の役目

先ほどの、お子さんの発達障害を心配する母親の話に戻りますが、夫婦がお互いを「満月」として見ることで、夫婦関係が多少なりとも上向きになると、「相手のせいかもしれない」という疑念が消え、「相手はすばらしい個性を持つ存在だ」という意識に変化していきます。

そして、夫婦の関係がよくなると、それに呼応するように、親子関係やお子さんの心の不調が改善していくことはよくあります。子どもに接するときの親御さんの「マインド」が変わるからです。

多忙でなかなかお子さんと触れ合う時間がない父親であっても、母親に負けない愛情をお子さんに抱いているのは間違いないでしょう。しかしながら、世の父親の多くは、お子さんを思うがあまり、いつも「三日月」として見てしまいます。母親と一緒になって注意したり指示命令したりするのは、子どもをそもそも三日月と捉えているからなのです。

父親としての愛情から、「なんとか欠けている部分を補ってあげよう」「ここの部分を足してあげよう」とする。でも、そうやって付け足してできた丸は、きれいなまん丸にはなりませんし、そもそも付け足す必要なんてない。もともと子どもは「満月」で、まん丸なのです。

「何かが足りない」と思うのは、あくまで父親や母親の認識です。勉強が不得意な子どもに対して、「この子は頭が悪いから、もっと勉強させなくては」と一方的に思うのは、くり返しますが「子どもを三日月と捉えているから」です。

スポーツが得意だったり、絵が上手だったり、子どもには勉強以外にさまざまな能力があるかもしれない。学校の教科にはない才能や美点を持っている子どもはたくさんいます。

日本の学校教育の多くは今のところ、同じことを学ばせて特定の(主に勉強)能力を比べ、競争させているのが実情です。決められた知識を頭にたくさん詰め込み、アウトプットできれば「頭がいい」とされますし、それが苦手な子どもはなかなか評価されず、自己肯定感をなくす一方となります。

本来は、どの子どもも、もとから「満月」。大げさな言い方ですが、一人ひとり、才能豊かなのです。日頃から「キミはすばらしいんだよ」というマインドでお子さんに接することが基本となりますが、それをお子さんに「教える」のではなく、お子さんから「引き出す」ことが、一家の主人である父親がやるべき、子育ての基本的な姿だと私は思っています。


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